2017年7月19日水曜日

妥協なき完全理解 その1 鳩間節1番 スライドを並べた




















妥協なき完全理解 2 鳩間節「美しゃ むいだる」


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今日は、鳩間節の2番に行きます。




八重山民謡をやっている方にはお馴染みの歌詞ですが、この2番は、細かく見ていくと、けっこう課題の多い歌詞であったと思います。




蒲葵(くば)とは・・・ビロウ(Livistona chinensis、蒲葵、枇榔、檳榔)はヤシ科の常緑高木。漢名は蒲葵、別名ホキ(蒲葵の音)、クバ(沖縄)など。古名はアヂマサ。


 鳩間節1番は、鳩間中岡に駆け上ったのです。30mくらいの岡だから走って登るのも造作ないでしょう。2番はこの鳩間中岡の頂上の蒲葵(くば)の美しさを歌ったものです。




 課題の一つ目。「美しゃ」(かいしゃ)とは、何か、です。歌をやっている人ならば、「そんなの美しい、という意味に決まっているだろう」と一蹴するかもしれません。

「美しゃ」の原形は「かいしゃーん」です。それがなぜ、「かいしゃ」という形でここで使われているのでしょうか。

 八重山古典民謡の現在、中心的立場にあられる先生から、昨年、平成28年時のコンクールの際、「君は言葉がわからないだろう。だから歌がいけていないのだ」と言う厳しいご指摘を受けました。
 今だから申し上げますが、私はいささか不満でした。歌の意味はわかっている訳ですから。本を読むとすぐにわかる。日本語と八重山島言葉は親戚関係の言語。似た言葉も多い。また、漢字・仮名混じり文で表記可能なので、漢字で書かれているとけっこう分かるものです。故に不満だった訳です。

 しかし、私が島言葉が分からないのは現実です。このようなことが分からないのです。
 「美しゃーん」「美しゃ」が「美しい」という意味があるのは分かっています。
 しかし、それでは「美しかった」(過去)。「美しくない」(否定)。「美しければ」(仮定)「美しかれ」(命令)が分かるでしょうか。

 それが私の課題と認識しました。

 まず、課題の一つ目は、「かいしゃ」とは何か、ということです。


 

「かいしゃ」は、原形は「かいしゃーん」で、上記のように変化します。
私は形容詞や動詞の活用の変化を分かりやすくするために、これらを4つのパートに分類しました。

 もっとも大事なのは「語幹」です。これは、変わりません(5類の動詞のみ変わるところがある)
 変化部は、子音は同じですが、その中で母音が変わる部分を「変化部」としました。
 つまり「あ行」「か行」「さ行_・・・「や行_「わ行」の中で変化する訳です。
 学校の国語、古文で習った「あ行変格活用」とか「ラ行変格活用」と言っていたものです。
 ちなみに「かいしゃーん」はラ行変格活用です。

 あと、それに語尾、接続語尾が続く訳です。
 接続語尾と言うのは、「事(くとぅ)「ぴとぅ(人)」とかがありますが、」このような単に単語を変えて繋がっていくもの。

 語尾は、もっと密接に、語幹、変化部と関係するものと考えて分類していますが、ちょっとはっきりしないところがあります。しかし、ここをくどくやると文法学者になってしまいます。そこまでは考える必要はないと思ってやっています。話は続きます。次のスライドです。

 

スライドの通りです。石垣方言辞典(宮城信勇 著)によると・・・というか、ネイティブではない私は、このようなせ正書に頼って理論で追求していくしかありません故。
 「かいしゃ」は、「かいしゃーん」の語幹なのです。
形容詞の語幹は、そのままで、

1)名詞として
2)副詞として

使われます。

この場合、
1)名詞として使えば、美しさが生い茂っている、となるし
2)副詞として使えば、美しく生い茂っている、となるわけです。


 次の課題は、「むいだる」(萌いだる) です。ここに「萌え」を当てたのは、他には見ないですね。普通は「生いだる(むいだる)」としているのが多いです。
これは私の発案です。
 なにが正しい、何が正しくない、と言うことはありませんが、「萌」を当てると、なかなか気分が出るでしょう。
 2番目の課題はこの「萌いだる」とは何か、ということです。
 正書によると「生えている」意訳して「生い茂っている」という感じです。そう思います。しかし、ここではこの文章をもっと細かく見て行きましょう。



この「萌いだる」は「萌い」と「たる」に分かれます。
「萌い」の原形は「むいるん」です。
その変化を示しました。
 5類の動詞で、例外的に語幹が変化します。
 「や行変格活用」ですが、変化部で「ー」という母音を伸ばす印が入っています。
 「やいゆえよ」は「い」と「え」を含む特殊な活用です。しかし、本来は「ゐ」(い)。「ゑ」(え)であったわけです。
 まあ、変化部で「ー」の所もあるということでここではお願いいたします。
 さて、ここで「萌い(むい)」は連用形 と解釈します。


 「だる」は何か、というのが難しかったですね。
 石垣方言辞典でけっこう調べました。
 「たるん」という後で出ていました。
 石垣方言辞典の文法のところにも「接尾語」として出ていました。
 動詞の連用形2に接続して、その動詞を強める働きをする、とありました。
 日本語の古語でも「たり」というのがあり、これと似ているような気がします。

 参考までに、古語の「たり」の解説

たり
助動詞タリ活用型

《接続》体言に付く。〔断定〕…である。…だ。

出典平家物語 一・鱸
「清盛(きよもり)、嫡男たるによって、その跡をつぐ」

[訳] 清盛は、正式の長男であることによって、その(死んだ父の)家督を継ぐ。
注意完了の助動詞「たり」や「漫漫たり」などのタリ活用形容動詞の語尾と混同しないようにすること。

参考格助詞「と」+ラ変動詞「あり」からなる「とあり」の変化した語。
語の歴史中古には漢文訓読の文章に用いられ、和文にはほとんど用いられなかったが、中世以降和漢混交文に用いられて一般化した。




 たるん の活用です。
 「たる」は連体形。名詞に接続します。故にこの場合、「岡ぬ蒲葵(むりぬくば)」の「岡」に接続しています。


 つまり「むいだる」は「むい」という植物が生えている様を表す動詞に「たる」がついてこの動作が強められています。故に「生い茂る」という訳になると思います。
 歌詞では「だる」と濁っていますが、語調の関係でしょう。すなわち「むいたる」よりも「むいだる」の方が言いやすい気がします。
 この次の「連りたる」は「たる」ですね。濁っていません。


次の課題です。
この「連りたる」です。
これは、「むいだる」と同形です。
ゆぬむぬ です(同じもの です。「ゆぬ」とは、「同じ」という意味)


 「連りん」の変化です。
 中舌母音の表記法には2通りあり、つまり、この場合「ちぅりん」と「つぃりん」ですが、正書では「ちぅ」が多く採用されています。
 大濱安判先生の書かれた工工四では「つぃ」が採用されています。
 故に私も「つぃ」派なのですが、正書には多く「ちぅ」が出ていますので、ここでは、「ちぅ」を多く使っています。ただし、「つぃ」も各所に出てきます。努めて統一を計ってはおりません。

 さて、このような表を見せられると、「ゲーッ」となる方も多いかと思いますが、落ち着いて考えられたら良い。この表のお陰で、過去形とか否定形、丁寧な言葉、などが一目で分かるではありませんか。そして、単語は違っても同様なリズムや語感がある。それを暗記せよ、とも言えませんが、見ていると、何となく分かるようになるような気がしませんか。
 何もわからない、のと、何となく分かる(ような気がする)、というのは、かなり大きな違いと考えます。

 さて、「つりたる」ですが、これも「むいだる」と同様、強調の接尾語に繋がっていきますので、「ちぅりん(つぃりん)」の連用形2「ちぅり(つぃり)」が使用されています。
 

「連りたる」の解析 まとめます。
スライドの通りです。
「つぃりん」は3A類の変化の動詞。これは辞典を見なくてはわかりません。
慣れてくると推測はつくようになります。
その連用形2が、「つぃり」
それが強意の接尾語の「たるん」の連体形「たる」に繋がっている。
連体形は名詞に繋がる。故に、次の「つぃづぃ」(頂上)に繋がってい行くのです。


これは①と同様です。
形容詞の変化と、語幹がそのまま使われた場合、名詞か副詞の意味を持ってきます。



さて、鳩間節2番の歌詞 今まで以上にはっきりとしてきましたでしょうか。
それでは、また。島仲浜より、さようなら。

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2017年7月14日金曜日

八重山民謡と島言葉 妥協なき完全理解 1 鳩間節 「鳩間中岡 走り登り」




おはようございます。

 今年の八重山古典民謡コンクール 6月。

 受けてきたが、落第という結果であった。

 しかし、良い刺激をいただいて、島言葉の勉強に勤しんでいる。

 去年もこの時期やっていた。去年は、とぅばらーま の詩を暗記していた。

 今年も、まずは、去年暗記したとぅばらーまの詩を見直した。だいたい、300首くらいであるが。

 やなり、八重山古典民謡を学習する上で避けて通られないのが、島言葉である。
 
 つまり、八重山の言葉、石垣方言 をどうするか、である。

 
 沖縄の言葉は日本語と奈良時代の少し前に分離したと言われている。

 故に、古語に似ている。古語は、平安時代のものを主にしている。

 沖縄の言葉はそれ以前に分離し、またそこで独特の変化、発展をしている。

 故に、国語の古典の時間にやった文章より島言葉は難しいのである。

 とは言え、八重山の言葉は日本語とは親戚関係にある。

 語感が似ているし、言葉の変化、特に動詞の変化も似ている。聞くと、そのような感じなのかな、と思う。英語のように、冠詞や前置詞があるわけではない。語順も同じである。

 文法上、難しいのは、日本語もそうであるが、動詞の語尾の変化である。これが助動詞や助詞と結びついて変化する。これが難しい、


 例えば、「走る」(はしる・・日本語)は、八重山言葉では「ぱしるん」漢字を合わせて書くと「走(ぱし)るん」 なるほど日本語と似ている。

 さて、これがどう変化するのか。

 日本語でも、「走る」は、以下のようにいろいろ変化する

 走られる(未然形 可能を表す)

 走った(過去)

 走ってしまった(過去完了)

 走る時(時という名詞に接続するから連体形)

 走った時(過去の連体形)

 走り登る(走る と 登る という2つの動詞が重なっている。動詞に重なるのは連用形)

 走ります(「ます」という丁寧な助動詞 これに繋がる連用形)

 お走りになる(尊敬語)

 走ってみよう(自発を表す 志向形)

 などいろいろあり、それぞれに文法の名称がついている。

 では、八重山の言葉で「走る」つまり「ぱしるん」はどのような変化をするのであろうか。



図1 ぱるん(走る)の変化

このようにいろいろな変化をしている。

 これが、言葉の難しさであろう。

 日本語、八重山言葉の共通して持つ難しさである。

 これを小さい時から八重山で育ち、この言葉を使っていると、自然に身についてこのような変化が自然にわかるようになる。

 しかし、八重山で生まれ育った人以外は違う。ではマスターするにはどうするのか?

 この、変化する仕方に何がしかの法則性はないか、ということになる。

 それが文法なのである。

 まず、表を改めて見ていただきたい。

 「ぱしるん」をいろいろ分けて見た。

 まず語幹である。ここは変化しても変わらないところ。

 語尾、接続語句 も変わらない。

 変わるのは、「変化部」である。これが「ぱしるん」の場合には「ラ行」で変化するのである。

 この動詞の変化の仕方に基づいて八重山出身の文法学者の宮城信勇先生は「石垣方言辞典」の中で動詞を15類に分類された。

 その分類は法則性に基づいて分類したのである。この法則性こそが文法である。これが分からないと全部の動詞のいろいろな変化を一つ一つ探らないとマスターができないことになる。もちろん適当に、雰囲気で、で出来るわけがない。

 八重山の言葉の動詞に関しては、動詞の変化は15通りに分類されている。
 15通り、といっても頻繁に使われるのは5通りくらいのもので、あとの10種類は、例外的な変化をする動詞である。ひとつの分類に該当する動詞が一つしかない、というものもあるのだ。(例えば、第9類 は、「ある」という意味の「あん」しかない)

 文法というものは一見面妖ではあるが、ある種のリズムがあり、慣れてくると動詞を見たら、その原形の予想がつき、すると、どのように変化するか、その分類がわかるようになる。私もまだ、八重山の言葉をこのように勉強したのは、ここ1ヶ月くらいのものなので、ここまでは行ってはいないが、もう1ヶ月くらいこのようにやっていけば、そのくらいになるのではないだろうか。

 最近、英語のお勉強のことで、政府のおエラ方が、英語は文法を覚えずに雰囲気で掴むのが良い、みたいなことを言っている。また、それに乗じて、スピードラーニングのように「英語の文法は勉強するな」とまで言い切って宣伝しているものもある。はっきりいうが真っ赤な嘘である。改めて最近八重山の言葉を勉強して、語学をマスターするにあたり文法こそがもっとも重要であることを再認識させられた。

 さて、実際の歌で見ていこう。
 取り上げるのは、八重山古典民謡の代表的傑作 鳩間節

図2 鳩間節 歌詞とその意味


 実際の歌はこちら



さて、漢字でも書かれているし、言葉も似ているので、何となく分かる。

 なるほど、日本語と八重山言葉は親戚の言葉なのである。

 しかし、これを徹底的に分かるにはやはり文法を使い解析を試みなければならない。

 単語、特に名詞は簡単である。「下」は「すぃた」というのである。それだけである。

 動詞も似ているから分かる。

 「ぱりぬぶり」は「走り登り」である。

 今、徹底的に妥協のない完全理解のためにはどうしたら良いか。

 単語を見る
 
 名詞は簡単。

 まず、鳩間中岡(はとま なかむるぃ)。
 鳩間中岡(はとま なかむるぃ)とは地名である。鳩間島は周囲4kmの小さい島。サンゴ礁の島で隆起はないが、島の中央の一番高いところは海抜30m。くばの林が美しく生い茂ったところである。


鳩間中岡

 
 結局、この「ぱりぬぶり」を理解しなければならない。あと難しい語はない。

 走る、を意味する「ぱるん」が、なぜ「ぱり」となるのか?

 動詞の「登り」に繋がるから、連用形となる。表を見ると、「連用形1」に「ぱり」とある。これである。

 「ぬぶり」も同様の変化。1Aの変化動詞。

 歌の終わりは、連用形になることが、多い。日本の和歌や短歌でも多い。

 これは連用形、あるいは、接続形 と見ることができる。

 このようにして唄を解析していこうと思っている。
 それが、八重山民謡のより深い理解に繋がるのではないか、と思うからである。

 また、昨年の6月のコンクールの会場で、八重山民謡の中核的な師匠から、「君は島言葉(八重山の言葉)を分からないだろう。それでは、ちゃんとした歌は歌えない」とのご指摘を受けたのである。

 私も他の生徒と同じように、例えば上の鳩間節ならば、唄を聞いただけではたしかに意味は分からないが、図2のように歌の本を見ると理解できる。それでよし、としていたが、それではダメなのであろうか、と思った。そしてこのような勉強を始めたのである。

 さて、最後に最近の英語教育の憂慮していることについて述べよう。
 
 小学校でまで英語を勉強しよう、などと言っているが、小学校から高校まで英文法をなぜか理由なく軽視して行なっているようだ。
 雰囲気で掴むのだ、とか、ネイティブは文法など勉強しないから、と言っている。

 しかし、これでは英語を理解することは100年やっても不可能であろう。
 
 英語の勉強 日本語との違いを学び、覚えるべきところは覚える。 

 例えば、単語である。犬はdogで猫はcat。なるほど違うのである。これを覚える。

 しかし、このように、英語と日本語の意味が一意対応しているものは良い。そのまま覚えたら良いのだ。
 
 しかし、have とか get とか、as のようにいくつも意味があるもの、これこそが難しい。haveに至ってはこれは文法も理解しなければならない。

 haveなんて、日本語では「持っている」という意味しかないが、英語ではそうではない。

 現在完了 過去完了にも使うし、あと仮定法にも使われる。

 単語の理解と並んで大事なのは、文法である。

 先の仮定法 ならば、英文法の仮定法の章の所の英語の文章を読んでいく、そして理解していけば良い。そこには、仮定法の説明も書いてあるから、きっと理解できるであろう。
 しかし、英文法というもの、体で分からなければならないことがある。
 故に、そこにある文章を暗記していけばよい。
 すると「仮定法」というグループで文章が頭にピタッと入る。これが徹底的な理解に繋がる。
 はっきり言って、高校の参考書 チャートでも、フォーレストでも、そこにある英語の文章を覚え、と同時に文法の説明を理解できれば、英語の勉強は終わりである。そのようなものではないだろうか。
 あと訓練のために、英文解釈、英作文、聞き取り、みたいな問題を解く、ということがあるのだ。

 つまり、英文法こそが英語の勉強の柱であるのだ。それを軽視する、政府の要人達。バカである。バカに付き合っても良いことはないだろう。英語ももちろん理解できないだろう。
 
 さて、先の八重山の島言葉。

 日本語とは親戚関係 類縁語である。似た単語も多い。

 日本語もそうであるが、文法の肝(くぃむ)は動詞の変化である。動詞と助動詞の結びつき。その時の変化である。
 これが難しい。しかし、その壁を超えなければならないと思うのである。

 今回はまず、鳩間節の1番。少しずつ紹介していきたいと思っているのでよろしくお願いいたします。


石垣方言辞典(宮城信勇 著 沖縄タイムス社)から

動詞の活用はなかなか大変である。

私は先の表で動詞を4つの部分に分けた。
正直にいうといろいろ迷う部分もあるのだ。

例えば、変化部で、「ら」とするのか「らー」の「ー」も含めるのか。

例えば、未然形の「ば」は語尾とすべきか、接続語尾とすべきか。

しかし、あまり悩んでも仕方がないな、と思っているのです。

大事なのは、語幹は変わらない(一部例外あり)。変化部は、その行で変わる。例えば、ぱるん は ラ行で変わり(活用し)、書くん は、カ行で変わる(活用する)。

 語尾、接続語句はその動詞のタイプによって同じ。

 それを踏まえてエクセルを使って整理してみました。